「初心忘るべからず」の本当の意味





新宿御苑の一角で、今はツワブキの花が太陽の光を一心に集めて、真っ黄色に咲いています。

黄色ってやっぱり元気になる色だな~と感じます。



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さて、先日、能楽師の安田登さんという方の講座に参加してきました。



安田さんは能楽師であるだけでなく論語や古事記の研究、米国発祥のロルフィングというボディワーク、AIについてなど様々な研究や活動をされている方で、身体・心・言葉などにとても深い知見をお持ちの方です。


最近の私にとっては、心理学の本を読むよりは、このように何かの世界に造詣を深めた方と接することが心のことについても自分のことについても発見が大きい気がしています。



講座の内容はとても多岐にわたっていて、とても一言ではお伝え出来ないのですが、ひとつ心に残ったお話があるのでそれを紹介したいと思います。



「初心忘るべからず」の本当の意味について。



「初心忘るべからず」とは、故事ことわざ辞典によれば、「何事においても、始めた頃の謙虚で真剣な気持ちを持ち続けていかねばならないという戒め」とあります。



確かに、皆さんそう思われていますよね?

私もそう思っています。



それはそれとして、とても大切な心構えだと思いますので、それを否定する必要はないと思います。





でも、安田さんによれば、「初」という字は「衣」と「刀」からできていて、元々の意味はまっさらな生地(衣)に初めてハサミ(刀)を入れることなのだそうです。



つまり世阿弥が残した「初心忘るべからず」という言葉の真の意味は、「折あるごとに古い自己を裁ち切り、新たな自己として生れ変わらなければならない」ということです。



とても高価な絹の反物も着物にするには必ずハサミを入れなければなりません。

反物が高価であればあるほど、そこにハサミを入れることは怖いですね。





心の苦しみの多くは、何か握りしめているものがあって、それに捉われていることが原因のことがあります。



例えば、会社の体制が変わってきつつあるのに自分はこれまでのやり方に拘って流れについていけなかったり、段々歳を取ってきている時に若い頃の自分に拘ってみたり、夫婦関係に限界を感じつつも離婚に踏み切れなかったり、せっかく資格を取ったからと言って面白くない仕事を続けていたり、「こうあるべき」という自分の中のルールがあって今ここで感じているリアルな気持ちに素直になれなかったり。



多少窮屈でも「今までこうだったから」と現状維持を選択してしまう方が楽です。



でも、そうすると人生には新鮮な喜びはだんだん少なくなってしまいます。





能は禅の精神を体現したものでもあります。



禅は武士の間に広まりました。



武士はいつ自分が死ぬか分かりません。

常に死と隣り合わせで生きていたのです。



だからこそ、「今ここ」に生き切る禅の精神が必要だったのですね。





「今ここ」を大切にする精神は、近年心理療法の世界では「マインドフルネス」として逆輸入されてきました。



日本の伝統文化の中には「今ここ」「マインドフルネス」は深く根付いています。





もう一度、いえ何度でも、「今ここ」を思い出したいものです。



今ここから、新しい自分を生きる。





ただし、外側の状況を変えることのみが生まれ変わることではありません。

心の内面の生まれ変わりの方が、より大切なのではないかと思います。





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