質のよい睡眠を取るために
今回のテーマは睡眠です。私たちにとって必要不可欠な「睡眠」にまつわる様々な疑問について、触れていきたいと思います。
睡眠の意義
人は、人生のうち睡眠に費やす時間は約3分の1から4分の1と言われています。つまり・・・人生80年とすると25年から20年は眠り続けていることになります。眠ること=無駄なこと、という捉えられ方もしますが、睡眠は人間が生きていく上で欠かすことのできないものです。
睡眠ってそもそも何?
人の身体は、眠ることによって知らず知らずのうちに次に挙げるような働きをしています。
睡眠の役割
- 特に大脳を休ませ、修復するため(大脳は意識がある間はフル稼働しています)
- 記憶の整理(レム睡眠時、体は休んでいますが脳は働いており、記憶の整理や定着を行っています)
- ストレスの消去やホルモンの分泌(成長ホルモンなど。成長するだけではなく、お肌にも良い効果があります)
- 成長ホルモン分泌による身体の修復、免疫機能の維持(血液を作りだし免疫力を高める)
- 記憶や判断、情動など大脳で営む高次脳機能の休息等
睡眠の種類
一晩の睡眠には、ノンレム睡眠とレム睡眠というものがあります。
ノンレム睡眠(Non REM Sleep)の特徴
☞ 肉体を休めるためのノンレム睡眠
・大脳皮質のメンテナンス
・成長ホルモン・免疫関連物質の分泌(白血球を増やす)
・深い睡眠(熟睡状態)
レム睡眠(Rapid Eye Movement:REM Sleep)の特徴
☞ 精神的疲労を回復させるためのレム睡眠
・急速な眼球運動が生じる
・筋肉が緩んでいる状態
・脳は活発に動いているが、交感神経は緊張状態
・記憶の貯蔵⇒夢を見る
日本人はどれくらい寝てるの?
日本人の平均睡眠時間は7時間54分で,男性は7時間58分,女性は7時間49分と男性が9分長くなっています。
適切な睡眠時間ってどれくらい?
適正な睡眠時間の量について、基準はありません。これは必要とされる睡眠時間に個人差が存在するためです。いわゆるロングスリーパー、ショートスリーパー等もその一つです。
必要とされる睡眠時間は加齢と共に減少するとされており、個人内でも年齢や環境によって変化します。なお、睡眠時間は短い場合に問題視される傾向がありますが、長い睡眠時間が良いとは限りません。
自分の睡眠時間を他者や以前の自分と比較したり、より長く眠ろうとすることは適切とは言えません。日中に快適に活動できることを睡眠充足の目安とし、睡眠時間にこだわらない姿勢が重要です。
寝溜めってできるの?
ある日に普段より7時間(約一晩分の睡眠時間)だけ長く眠っても、その翌日に徹夜をすればやはり眠気が溜まります。つまり、寝溜めはできません。
一方、睡眠不足が溜まっているときには回復するのに長めの睡眠を要します。平日に寝不足になっているサラリーマンの多くは週末に1~3時間ほど長く寝ることが知られています。これは寝だめ(貯金)をしているのではなく、あくまで借金返済をしているわけです。
長時間睡眠の後には気分の悪さが出たりします。また、長く寝て時間を無駄にして落ち込むこともあったりします。メカニズムは不明ですが、睡眠を取り過ぎること自体が、軽い抑うつをもたらすと言われてもいます。
うつ病のときに眠れないとうつのリスクが増えるのを考えると逆説的ですが、基本的には長く眠りすぎると抑うつが出て、断眠(徹夜)は気分をもちあげる効果が生じる傾向があります。特に深い眠りをとり過ぎると、うつ傾向が強くなるといわれてもいます。
朝に光を浴びる効果
朝にカーテンを開け、日光を浴びるのってなんか健康的なイメージがありますよね。実際、ほんとに健康にいいんです。
- 明るい光を浴びると、神経を介してセロトニンが分泌されます。
- セロトニンは大脳を覚醒させ、集中力を高め、気分をすっきりさせます。
- 自律神経を調節し、交感神経を適度に興奮させます(やる気を出す)。
- 夜になるとセロトニンは睡眠ホルモン(メラトニン)に変化します。
- メラトニンは体内の温度を下げて、眠りやすくします。
寝ないとどうなるの?
人は寝ないことで心身に大きな影響が生じ始めます。以下はその一例です。
- 物事を考えられなくなる
- 判断力/集中力/決断力が低下する
- 記憶力が低下する(一夜漬けは効果がないかも)
- 倦怠感/疲労感
- 気分の落ち込み/気分がハイになる
- 頭痛/めまい/ふらつき
- 摂取カロリーが増える⇒体重増加へ繋がる!
- 幻覚や妄想が出現する
264時間12分寝なかったというランディ・ガードナーさんの記録があります。断眠開始の4から5日後にガードナーは神経過敏となり、疑い深くなりました。白日夢や記憶障害も現れ、知覚障害もおこしました。
睡眠不足は精神機能の変化が強まり、判断力が低下し、錯覚、誤認、誤解などが生じるようになり、中には幻覚、妄想を呈すことがあります。
睡眠を妨げる生活習慣
ニコチン(たばこ)
・吸入直後はリラックス作用、その後は覚醒作用のみ。
アルコール
・睡眠薬のような効果があるが、睡眠の後半では浅くなる。利尿作用もあり、中途覚醒・早朝覚醒の原因。
・アルコール耐性があるので、アルコール依存症の危険性あり。
・摂取は就寝4時間前まで。
ダイエット
・空腹・満腹は覚醒の原因。空腹時は軽食が有効。
エクササイズ(運動)
・1日20分~30分、週3回程度の運動が睡眠を促進。激しい運動は昼間(3,4時)や夜間(6,7時)が良い。
・寝る2,3時間前の軽い運動は、睡眠を促進。寝る直前の運動は避ける。
例:散歩、水泳、サイクリング、バドミントン、エアロビクス等
静かな環境
・赤ちゃんの夜泣き、電話の音、車の音などで大抵の人は起きてしまう。
空気環境
・きれいな空気は睡眠を促進、そうでないと不快な夢の原因に。
明かり
・寝る前の強い明かり(例えば街灯、コンビニ、携帯など)は避ける。
・朝は日光を目から取り込むと、睡眠リズムが調整される。
室内温度
・自分が快適に眠れる温度を探す
暑い部屋(24℃以上):睡眠中に体を動かす、深夜の覚醒
寒い部屋(10℃以下):不快で情動的な夢を見る
体温
・寝る直前の熱いお風呂は避ける。入浴は就寝の2時間前が良い。
・冷え性では深部体温の低下が不十分なため、寝つきの悪さと関係する。
睡眠の工夫
それでは手軽にできる睡眠改善方法はあるのでしょうか?
まず、大原則として、寝る時間以外には布団に入らない!それ以外にも以下のような工夫が考えられます。
①ベッドに横になるのは眠くなった時か、設定した就寝時間になったときだけにしましょう。
②約15分たっても寝付けない時には、ベッドを出ましょう。リラックスできることをして、再度眠くなったらベッドに入りましょう。
③寝ること以外の活動でベッドを使わないようにしましょう。
④眠くても日中や夕方の昼寝をさけ、いつも通りの生活をしましょう。
初めにお話ししたように、人は人生の多くの時間を眠って過ごします。だからこそ、少しでも「睡眠」に関する知識をつけ、質の良い睡眠を目指していきましょう!!